新型コロナによる中小企業へのビジネスインパクト

Fitch Rating社の世界経済見通しに関する最新レポートによると、新型コロナのパンデミック禍で、世界の国内総生産は4.6%減少すると見られています。これは3兆米ドルを超える世界的な損失です。多くの国で企業や国民に対して、予測される景気への悪影響を軽減するために様々な支援策が打ち出されています。当地シンガポールでは、GDPの約19%、つまり約925億ドル相当を投入し、経済損失を緩和すべく3つの刺激策を導入しています。

当地シンガポールでは、海外から多国籍企業を積極的に誘致してきたこと、また近年のイノベーションハブ化施策からメガベンチャーの活躍が目立ちますが、現時点ではシンガポール登記企業の99%を「中小企業*」が占めています。これらの企業への財政的な影響やその対処法への理解を深めるため、シンガポール3大銀行の1つであるUOB銀行のイノベーション部門「FinLab」の共同責任者であるフェリックス・タン氏にお話を伺いました。同銀行は、特に中堅・中小企業取引、リテール取引に注力しており、「FinLab」ではそういった顧客ニーズに応えるフィンテック分野のスタートアップ育成・連携を2015年から推進しています。

*年間売上高1億シンガポールドル以下、または社員数200人以下の企業

4月7日のサーキットブレーカー実施以降、シンガポール全般的なビジネス環境をどうご覧になっていますか?

先ず、新型コロナ以前から振り返って見ると、2019年の第3四半期の初め頃に、中国と米国の間で貿易戦争がエスカレートし始め、地域全体のビジネス環境は既に課題を抱えていました。殆んどの銀行が、これだけを背景に2020年に向けて準備を始めていました。2020年に入り、シンガポールでは、チャイニーズニューイヤー前後の1月中旬頃から、新型コロナの問題が顕在化。以降、段階的に渡航制限が実施され、旅行関連ビジネス(航空会社、旅行&ツアー代理店、ホスピタリティ、コンベンションセンター、展示会など)が大きな打撃が受けるとが明らかになりました。そして2020年4月7日にサーキットブレーカーの実施。「ステイホーム」が必須となり、プライベートとパブリックの両方であらゆる規模の集会が禁止されました。中心地のオフィスやショッピングセンター・各種店舗だけでなく、シンガポール全土のレストラン・カフェやホーカーから、人がいなくなりました。結果として、ドミノ倒しに事実上、全ての業界のビジネスに影響が及ぶようになりました。

2020年6月2日以降、これらの措置の段階的な緩和が開始されましたが、それまでの2ヶ月間に及ぶサーキッドブレイカー期間中にシンガポール国内の各業界が受けた甚大な影響はまだまだ続くと思います。「スイッチをオン」に戻したからといって、すぐに「通常に戻る」とはいかないでしょう。 「ニューノーマル」の開始だと思います。

サーキットブレーカー後の「ニューノーマル」時代において、中小企業は消費者と購買行動に何を期待できるでしょうか?

過去のパラダイムが
「場所」なら、
これからは「内容」
第一に、今までその習慣の無かった人も「オンラインでの買い物」に慣れたでしょう。従って、オンラインにおける一貫性のあるブランドの構築とマーケティング、そしてインターネットを効果的かつ効率的な販路として利用すること。こういったことへの対応がまだ十分で無い地元の中小企業は多いと思いますが、今後は注力すべきです。しかし、心配はいりません。こうしたマーケティングの代理店は沢山あります。

次に、何と言っても「利便性」。消費者は「時間を節約」し、より多くの時間をより楽しいことに費やそうとするでしょう。これも元々、語られてきたことですが、新型コロナのパンデミックによる突然のサーキッドブレイカーで、多くの人が注目しています。

では中小企業として、顧客にとっての利便性を向上させ、購入しやすくするにはどうしたら良いのでしょうか?自社の既存ビジネスモデルを振り返り、もし競合より優位に出来る点があれば、徹底的に考え抜いて「自社の独自性」を出すべきです。

今、中小企業ができることは何か、どうお考えですか?

ビジネスモデルとその運用方法を再考すること

経営者は、変化する消費者の購買行動やビジネス環境を熟考し、目先の業績評価のみならず、ニューノーマルの時代に即したビジネスモデルに見直すことに、十分に時間を割くべきでしょう。生産性や業務効率を上げて事業プロセスを最適化するには、どこでテクノロジーを活用できるだろうか?コスト削減と時間の節約を実現すべく 市場により良い価値提案をするため、そして顧客へのサービスを向上させるためには、どのようにテクノロジーを活用できるだろうか?

こういった問いかけに明確な方向性を打ち出すことが、事業継続の鍵となります。

事業を継続する

B2Cの中小企業にとっては、自社商品やサービスがネット上で表示・検索できない、またテイクアウトや宅配サービスを実施していないのであれば、非常に困った状況にあることは明白でしょう。商材にもよりますが、オンライン販売と配送を実現する有料のショッピングプラットフォームは沢山あります。幾つか比較し、実施すべきでしょう。

B2Bの場合は、B2Cほど深刻では無いと思いますが、対面での商談を行えないので、もしまだ始めていなければ、スマートフォンやタブレットでビデオ会議を利用出来ます。また、既にオンラインで受発注ができるシステムがあるのなら、なお良いでしょう。

B2C、B2Bいずれの場合でも、 物理的な在庫を抱えている、つまりキャッシュフローが滞っているならば、それらの販売に目を向けるべきです。徹底的に探せば、何らかの需要はあるはずです。適切なオンラインプラットフォームを使用し、現在の環境における適正な価格で訴求すれば、在庫は動き始め、待望のキャッシュフローを生み出す可能性が高まります。

スタッフのスキルを上げよう

この時期、出来る限りスタッフを解雇するのではなく、スキルを向上させるようにして下さい。特にこのような状況では、新型コロナ以前に比べて全体的に物事が進むのが遅いですが、そのような中で仕事が続けられ、スキルを向上させる機会を得られることを、スタッフはとても嬉しく思うでしょう。このような対応を行えば、物事が上向き始めるのは時間の問題ですから、今までにない、よりデジタル化したビジネスを扱う準備が整った生産性のあるスタッフで臨むことが出来ます。

シンガポール総企業の99%を「中小企業」が占めることを意外に思われた方も多いのではないでしょうか?新型コロナ禍で、1%を占める多国籍企業が、新規採用を手控えるとともにやむを得ず整理解雇等に踏み切る場合も多く見込まれることから、シンガポールにとって、中小・中堅企業を支援していくことは、非常に重要です。と同時に、日系企業にとって、この時期、上述に代表される分野で中小・中堅企業をターゲットとしたビジネスチャンスを捉えていくことで、競合に先んじることが出来ると言えます。ウーバーやAirBnB等のメガベンチャーはリーマンショックのタイミングで勃興しました。今回の新型コロナ禍をイノベーションへの変革のタイミングと考え、ぜひ新しいビジネス機会をご検討下さい。

ExpertConnect Asiaは、東南アジアを中心に「各界専門家」ネットワークを組織化しています。それぞれの業界に精通した「C-Suite(CEOやCOO等の幹部経験者)」や経験豊かなオピニオンリーダーが、新型コロナ後のニューノーマル時代に生じる変局とビジネスチャンスに関して、アドバイスいたします。1時間単位でのご利用が可能です。

詳しくは、https://expertconnect.asia/generalenquiryjpからお気軽にお問合せ下さい。
エキスパート: フェリックス・タン
共同経営者, The FinLab(UOB銀行イノベーション部門)
取材: ダルン・ジャナーサン
プロジェクトアソシエィト、エキスパートコネクトアジア
Expert Insights
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