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データに語らせる– 新型コロナ以前との変化

新型コロナウィルスが世界中を席巻しています。もう聞き飽きた話題ではありますが、まだ逃れるわけにはいかない問題です。手の消毒、マスク、ソーシャルディスタンス等々、私たちの日常生活には「ニューノーマル」が行き渡るものの、ビジネスの世界では今なお、どう「ニューノーマル」を取り込んでいくかに苦戦しています。この目まぐるしく変化する状況に道筋をつけるべく、スタンダードチャータード銀行のデータおよびプライバシー業務担当ディレクターである、サチン・トン氏にお話を伺いました。 

  1)企業、特に金融機関が現在直面している主要な課題とは何でしょうか? 

「いかにして迅速かつ積極的にビジネスモデルを再構築できるか」 、 これは金融機関だけでなく、すべての企業が直面している課題です。2つの主要な視点を持って、取り組みが進んでいます。まず1つ目が、コロナ禍においてデジタルサービスを迅速にアップグレードすること、2つ目が膨大な量のデータを「持ち運びやすくする」ことです。 

  まず1点目に関して、対面サービスが必要な各機関にとって大きな障害が生じていることに注目する必要があります。これらの機関では、急ピッチで「いかに人間味を保ちつつオンラインサービスへの移行できるか」へのチャレンジに取り組んでいます。 

  そして2点目に関しては、働く人々の大半が在宅勤務になったため、データが今まで以上に可動的なものに進化してきています。セキュリティ面では常に課題がありますが、だからこそ、今日、「データ可動性」とセキュリティの両立は益々注目されています。自宅やパブリックネットワークはサイバーセキュリティ攻撃に対して非常に脆弱であり、危険に晒されやすく、サイバー攻撃を仕掛ける側は、セキュリティのこうした隙に付け入って機密情報を簡単に取得できます。各機関は、最新のテクノロジーを駆使し、顧客へオフィス内での勤務と同じレベルの信頼を提供するプレッシャーを感じています。 

  ある意味、データはいわゆる諸刃の剣であることが再認識されましたが、そこに新たな機会が出現したわけです。 

  

2) スタンダートチャータードでは、どのようなビジネスモデルで「非接触」、「ソーシャルディスタンス」を実現していますか? 

  競争力を維持するための顕著な兆候としては、人工知能(AI)テクノロジーの急速な発展が挙げられるでしょう。チャットボットやビデオボットにより「リアルに近い会話」を再現できるAIテクノロジーは日々進化し、金融機関では、リレーションシップマネージャー(通称RM、大口顧客担当者)の役割を補完できるようになっています。対話を必要とするいかなる場面においても、AIチャットマシンを活用しシームレスに対応していくことを目指しています。 

  言語を理解するというのは一見、単純な作業に見えますが、人間特有の能力です。私たちは、当然のように言葉の中から感情を読み取っていますが、機械が自然にそうすることは、ほぼ不可能です。そのためAIは、驚くほど高速な処理でこれを補おうとするのです。例えば、「ありがとう」というフレーズも2通りの解釈ができます。ポジティブに、感謝の意を表すこともあれば、ネガティブに、単に形式的だったり、あるいは皮肉を意味することさえあります。判断するためにはチャットへの返信する際の、入力速度など考慮に入れなくてはなりません。一般的に、入力速度が速いほど、動揺やいらだち示します。 

  リアル感のある対話をさらに一歩進めるために、一部ではビデオボットの展開も始まっています。ブランドアンバサダーを画面上にアバターとして表現し、ほとんど「対話」と言えるやり取りを顧客と交わすことが出来るのです。「住宅ローンの金利は?」と質問をしたら、大好きな映画スターが答えてくれるかもしれません。今後数週間から数か月のうちに、自動化されたオンラインでの契約に、こういった感情的なやりとりが導入されていく進歩が見られるようになるでしょう。 

 

3) 会社員だけでは無く学生にとっても、オンラインでコミュニケーションを図ることが急増しており、必然的に「データ」量も増えていると思います。世界中の企業にとって、こうした変化はどういったビジネスチャンスにつながるでしょうか? 

  「データは新しいオイルだ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。在宅勤務・在宅授業の増加により、オンラインコミュニケーションは劇的に増加しました。機会が生まれる一方で、見過ごせない課題も生まれていることも覚えておかねばなりません。データをどのように最大限集積し解析するか、ということです。 データの90%以上過去2年間に生まれたものという統計をみれば、その重大さがよくわかるでしょう。 

  この統計は過去30年間に遡って当てはまります。少し考えてみてください。驚異的に早いペースでデータが増えていることが分かり、有識者たちはこの溢れる量のデータを管理することを強く訴えています。今日の市場には、多くのアルゴリズムやモデルがあり、データを管理し考察するのに役立っています。現在のテクノロジーは、相関データから傾向を予測するために、履歴データを引き出すことに優れています。これによりデータをより効率的に解釈できるのです。 

  今のような危機的状況下においては、逆に大きな市場チャンスが生まれます。適切なツールやテクノロジーを使えば取得するデータが増える、そのデータが増える程、多くの有意義な考察が可能になります。最も分かりやすい例としては、多くの人が在宅勤務になったことで、従業員がどう感じているのか、どういったサポートが必要かを理解しするためにデータが分析されていることがあります。この分析結果から、多くの企業が、従業員に対しワークステーションを設置できるよう予算を割いて支援するようになりました。在宅勤務で精神的なストレスを抱えている人々には、会社側で方針を調整しサポートしています。データは会社の方針を決める上でも重要であり、ビジネスをより良くする能力を持っていることは明らかです。 

 

4) フィンテック関連のスタートアップ企業は、新型コロナウィルスのパンデミック前から注目を集めています。グローバルな銀行は、外部のイノベーターとどのように共創してきたのでしょうか 

  新型コロナによって企業は早急な改革を迫られています、さもなくば、すぐに競争力を失ってしまうからです。そうならないためには、積極的なデジタルへの移行が必須であり、その必要性は日増しに差し迫っています。 

フィンテック関連のスタートアップ企業の持つ特徴である「プラグアンドプレイ」、つまり柔軟さと機敏さは、パンデミック以降さらに注目を集めています。企業は技術的に競合に先んじるべく、スタートアップ企業と共存し、共創することにますます関心を寄せています。 

  一方、興味深いことに、既に新型コロナ以前から、この分野のイノベーションには常に注目が集まっていました。銀行は世界的な風潮の変化に適応するため、需要を常に認識していたのです。香港やシンガポールでのバーチャルバンキング(ネット銀行)の登場は、新型コロナの前から、この流れを明示していた好例です。ライドシェアリング企業の「Grab」や、通信会社の「SingTel」から中国企業「ByteDance」に至るまで、多様な企業がネット銀行の免許取得をめぐって競い合っています。 

  そして、新型コロナ以降、この動きがさらに加速していると考えています。企業はソーシャルディスタンス等の数々の制約に捉われず、高めるまではいかなくとも、少なくとも今までのサービスの質を保ったまま業務を遂行できるテクノロジーを強く欲しています。コロナ禍で、ヨーロッパでのフィンテックアプリの使用が72%と大幅に増加したという研究でも明確に示されているでしょう。(参考:Coronavirus Drives 72% Rise In Use Of Fintech Apps)*リンク挿入 

  迅速に変革を実行するには、機動力のあるフィンテックスタートアップ企業と共創することが必要であり、そしてフィンテックが近い将来、抜きん出る非常に期待の業界であることは明らかです。 

  サチン氏へのインタビューを通して、明確な点がありました。一歩先に行くには、データやテクノロジーをどう使いこなすかが大きく左右するということが再認識されました。大きな銀行もスタートアップ企業も、あらゆる企業が既にテクノロジーがもたらす利点を活かそうと努めてきています。そして、新型コロナのパンデミックとそれに伴う変化によって、その切迫感は今までにないほど高まっており、足踏みをしていると、あっという間にこの競争に乗り遅れてしまうでしょう。

 

ExpertConnect Asiaは、東南アジアを中心に「各界専門家」ネットワークを組織化しています。それぞれの業界に精通した「C-Suite(CEOやCOO等の幹部経験者)」や経験豊かなオピニオンリーダーが、新型コロナ後のニューノーマル時代に生じる変化とビジネスチャンスに関して、アドバイスいたします。ご利用は1時間単位から可能です。 

 

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エキスパート: サチン・トン

データおよびプライバシー業務担当ディレクター
スタンダートチャータード銀行

 

取材: リオ・タン  

イノベーションアナリスト
エキスパートコネクトアジア